依存症に負けない大人の習慣化のコツ

エッセイ

HOME > 習慣化の2つの意義

6.習慣化の2つの意義 

 前のページでは、習慣化への依存症と恐怖症の利用のコツについて述べた。このページでは大人になって取り組む習慣化の意義について考えたい。

心身の安定化


 習慣化することの意義については、サイトの冒頭で述べたように、基本的には行動の自動化が生活上のメリットとなるだろう。習慣化により、生活の中の特定の条件で、毎回決まった判断、決まった行動を正確に行うことができる。余計な思考に費やすエネルギーや、無駄の動作を省くことで、効率的な生活を送ることができる。
 
 習慣化により、日常生活で消費する労力を節約する分、より難しい判断や思考を要する仕事、創造性を必要とする作業、高度な身体動作を必要とする運動などに能力を集中して使うことができる。特に子供の頃からしつけられる基本的な習慣は、創造的で安定した生活の基盤を形成する上で欠かせないものだ。
 
 本サイトのテーマである、大人になってから取り組むプライベートな習慣化についても、同様の効果がある。この習慣化は、主には悪習慣や悪い癖を解消して正しい生活態度を習慣づけることが目標になる。正しい生活態度を身につけることの一番のメリットは、イライラ感、罪悪感、コンプレックスといった負の感情からの解放だ。
 
 悪習慣は悪い依存症が元になっており、依存行為をしていないとイライラして落ち着かない。この悪習慣を解消すると、それまでの依存行為のことを、普段の生活の中で考えること自体が無くなるので、イライラすることが無くなる。
 
 また、悪習慣や悪い癖を直せずにいる間は、どうしても周囲の人の目を気にしたり、自己嫌悪に陥ったりで気分が不安定なることが多い。正しい生活態度で日々過ごす限り、そのようなネガティブな思考に余計なエネルギーを使う必要がなくなる。
 
 その他、正しい生活態度を身につけることの意義は、気持ちが安定化することで、周囲に人とのコミュニケーションを円滑にできたり、何と言っても自分の健康を確保できることにある。
 
 心身ともに安定を図って、ポジティブに、より良い生活・人生を作り上げる、そんな創造的な活動に自分の能力を集中して使える状態を手に入れる。このことに習慣形成の大きな意義がある。


 

人の気持ちに対する深い理解


 大人になってから行う習慣化には、もう一つ別の意義があるように思う。そのように思う理由は、大人になってから行う習慣化が、子供時代の基本的な生活習慣形成のように、親や先生に一方的に正しい習慣をしつけられるものではなく、人が悪習慣を身につけてしまう弱さに自分自身が気づき、その弱さを克服して正しい状態を習慣づける経験を積むことにあるからだ。
 
 依存症に基づいて悪習慣が身についてしまうのは、人の脳の仕組み上、ある意味仕方ない。依存症になると、脳の快楽中枢が快感を感じることで特定の行為を繰り返すわけであるが、快楽中枢はその行為の良し悪しを区別しない。本人が心地よいと感じれば何でも依存の対象になってしまう。 

 だから、人は成長過程で様々なものや活動に触れるうちに、誰でも悪い習慣の1つや2つは必ず身につけてしまう。
 
 新しいものに触れた時、そのものの善し悪しをはっきり理解している場合を除いて、気に入れば誰でもそのものに依存するようなる。人は自分が初めて触れるものへの好奇心が強く、新しいものへ手を出しがちであるが、そのものが将来的に自分にどんな影響を及ぼすかを想像する力が弱い。したがって、悪習慣を身につけることを完全に防ぐことはできない。
 
 しかし、悪習慣を身につけたことを悲観する必要はない。悪習慣の問題に気づいたら、その習慣を正せばいい。そして、悪習慣を経験したことは、悪習慣を克服した後に大きな意義をもたらす。その意義とは、悪い依存症に陥っている人の気持ちが理解できるということだ。
 
 例えば、生まれてから一度も喫煙したことがない人は、喫煙がどれだけ精神的なストレスを和らげ、気持ちを落ち着かせるか理解できないだろう。そして、自分が理解できない行動をする喫煙者を、心のどこかで嫌うと思う。一方で、禁煙に成功した人は、禁煙後も喫煙者の気持ちはわかるし、喫煙者を嫌ったりはしない。
 
 大人になってから悪習慣を脱却して、正しい生活習慣を手にした人は、人が悪習慣に陥る背景、悪習慣を続ける人の気持ちを実感として理解できるし、正しい生活習慣を身につけることのメリットも理解できる。善悪両方の習慣を経験をしているからこそ、人の気持ちをより深く理解できるようになる。 

 このように、人間としての幅が広がることが、大人になってから行う習慣形成の大きな意義だと考える。